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  • Leo

愛で泣くことはあるかい

私には、障害とともに生きる、息子がいる。

胃ろう、気管切開、全身麻痺。ふつうに聞けばきっと、少し息をとめちゃうくらいの障害児だ。 むかし、小さな体で発作や呼吸困難をくり返す彼と、ケアに疲れ切っていた私。そんな日常のスキマにおとずれた、ちっちゃな、でもかけがいのない、エピソードを思い出す。 彼の目をのぞき込んだ私は、そこに、とんでもなく澄みわたった、うすブラウンの瞳をみた。まっすぐに、ただまっすぐに、私を見つめるその目には、どんな言葉も役に立たない、銀河にまで届きそうなほどの、無限の美しさがあった。

言葉もなく、その瞳に吸いこまれるようにして、私は、涙を流した。流した、というか、ぶわっと、勝手にでてきたようだった。

「愛」としか言いようのない、でも、畏敬にも似た気持ちで、人間はこんなにも涙をあふれさせるんだな、と。 その時私は、生まれてはじめて、知ったんだ。



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